TOTO Museum探訪記:創業者の想いとユニットバス60年の歩みを知る4時間

English

はじめに

先日、私たちは福岡県北九州市・小倉にあるTOTO Museumを見学する機会をいただきました。TOTOといえば「ウォシュレット」や「トイレ」のイメージが強いかもしれませんが、ユニットバスをはじめとする幅広い水まわり製品も展開している企業です。今回、TOTO様とミュージアムの館長様に4時間近くかけてご説明・ご案内いただき創業者・大倉和親(1875-1955)の思いTOTOのモノづくりの哲学に深く触れることができました。私たち自身も、創業34年を迎える中でTOTO製品、特にユニットバスを中心に歩んできた歴史があり、その足跡を改めて振り返る大変貴重な体験となりました。

1. TOTOの創業と「親切第一」の精神

TOTOの前身は、1917年(大正6年)に創立された東洋陶器株式会社です。創業者・大倉和親氏は「快適で衛生的な生活文化を日本中に広めたい」という強い信念を抱き、ヨーロッパで見た陶器製水洗トイレを国産化することに挑戦しました。

当時の日本では下水道も十分に整備されておらず、衛生面の課題が山積していた時代。大倉氏は2万回以上の試作を重ね、1914年に国産第1号の腰掛式水洗便器を完成させたといわれています。その後、小倉の地を選んだのは、石炭や輸出港など陶器産業に必要なインフラが整っていたから。初期の工場では紫川を使って原料や製品を船で運搬していたそうです。

彼が残した「どうしても親切が第一 奉仕観念をもって仕事を進めよ」という言葉は、TOTOの企業理念として現在に至るまで受け継がれています。この精神があったからこそ、当時理解されにくかった「水洗トイレ」の普及に地道に取り組み、海外進出も視野に入れてビジネスを拡大していったのだと感じます。

2. 1964年のユニットバス誕生と「ホテルニューオータニ」の衝撃

TOTOといえばトイレが有名ですが、私たちが最も関わりの深い分野ユニットバスです。実はTOTOは、1964年にホテルニューオータニへ「日本初のユニットバス」を納入しました。当時は、鉄の外枠を上下に分割し、現場でボルト接合して組み立てる方式。なんと栓抜きと電話まで設置されており、当時弁ふたを閉じてその上でくつろぐことがスタイルとして流行していて、**短期施工や多様なニーズに応えた“画期的なお風呂”**として話題を呼びました。

この頃の日本は高度経済成長期真っただ中。ホテルや公共施設などで効率よく多数のバスルームを設置する必要があり、ユニットバスのメリット(工期短縮品質均一化)が注目されたのです。その後、1968年にはオーダーメード方式を標準化し、FRP(繊維強化プラスチック)の技術を取り入れることで、施工性と耐久性をさらに向上。ユニットバスの普及は急速に進み、現在では「日本の浴室の約93%がユニットバス」とも言われるほど一般的な存在になりました。

私たちの会社も、1DAYリフォームを中心としたユニットバスの施工サービスを提供しています。これまで培ってきたTOTO製品の知識とノウハウは、創業34年を迎えた今でも大きな強みです。例えば、新商品について意見交換させていただいたり、日本で初めて組立を担当させていただいたり……それはTOTOの「親切第一」の精神を尊重しながら、私たち自身も「より快適なお風呂空間をお客様に提供したい」という想いを形にしてきただと思います。

3. TOTO Museumで見た「トイレ文化」の奥深さ

今回、TOTO Museumではトイレを中心に、歴史や技術を多角的に学べました。例えば、

  • 桜の木で作られたトイレ便座(1927年)
  • サイホンゼット式トイレ(開発に10年)
  • 初代ウォシュレット(1980年発売) — 当時の価格は14万9,000円で大学初任給並み
  • 国会議事堂に納入したトイレ(1936年頃) — 便座がなく、使い方を知らなかった人の靴跡が残る

こうした展示品一つひとつに、TOTOの開発陣が人々の暮らしをどれほど真剣に考えてきたかがにじみ出ていました。特に、「ウォシュレットは2万パーツで構成され、三次元的な設計が必要」という話には驚かされます。もはや“トイレ=ただの排泄空間”ではなく、高度な機能を備えた生活設備としての進化を遂げてきたわけです。

また、館内の省エネ設計にも注目しました。ソーラーチムニー陶片蓄熱による暖房効率アップ、屋根散水での冷却など、モノづくり企業ならではの環境配慮が随所に盛り込まれています。冬場の電力を2割カバーできるという仕組みには、本当に感心しました。

4. 「ユニットバス文化」を受け継ぐ私たちの使命

ユニットバスは、2024年で生誕60年を迎えました。TOTO Museumにもさまざまなユニットバスの実物展示があり、FRP技術標準化の歴史を知ることができます。ホテル建設ラッシュや住宅事情の変化に合わせて品質を高めてきたTOTOが、結果として多くの家庭へユニットバスを普及させた背景を垣間見る思いでした。

私たちも、ユニットバスリフォームを通じて“浴室の快適空間づくり”に取り組んできた立場として、今回の見学は大きな学びになりました。「一日で解体から施工までが完了する」という「お風呂の1DAYリフォーム」を可能にしているのは、TOTOの製造品質高いユニット構造技術、さらにBather(職人)・現場調査コンサルタントの技術包括的なマネジメント体制があってこそ。改めて「日本で生まれたユニットバス文化を継承・発展させたい」という気持ちが強まります。

5. 大倉和親の“ものづくり哲学”を胸に、これからも

創業者・大倉和親が残した手紙には「良品の供給、需要家(顧客)の満足が掴むべき実体。利益という影を追う人が世の中には多いが、実体を捕えずして終わる」という言葉が記されているそうです。まさに、TOTOが100年以上にわたって「親切第一」「良品と均質」を貫き、お客様の声を軸に商品開発・文化啓蒙活動を続けてきたことの証と言えるでしょう。

4時間にわたるミュージアム見学では、ガイドの方々から直接多くの“メーカーの方ならでは”のエピソードを伺うことができ、カタログやウェブ情報だけでは得られない“TOTOのDNA”を実感できました。長い歴史がありながら常に革新を続ける姿勢には、大いに刺激をいただいた次第です。

おわりに

今回のTOTO Museum見学は、私たちにとっても自社とTOTO製品との歴史を再認識する機会でした。ユニットバスの「お風呂の1DAYリフォーム」を中心に、弊社はこれまで数多くの現場でお客様の笑顔を支えてきましたが、そこには「どうしても親切が第一」という創業者の精神との共通点があります。

TOTOの水まわりイノベーションはこれからも進化し続けるでしょう。当社も日本で生まれたユニットバス文化を継承・発展させ、多くの方々により良い暮らしを届ける担い手としての責任を強く感じています。

これからも日々の現場を大切にしながら、最新の製品情報や施工技術を取り入れ、皆様の住まいに「快適」と「安心」をお届けしてまいります。もしユニットバスや水まわりについてご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。