東京都渋谷区代々木にあるTOTO Technical Centerを訪問し、バリアフリー設計から省エネ設備、さらにはIoTヘルスケアまで、トイレ空間の最新ソリューションを体験してきました。
100年を超える進化:国産初の水洗から最新ネオレストまで
まず案内されたのは、TOTOの歩みを紹介する展示フロアです。歴代の製品の中で象徴的な日本のトイレ技術の進化を知ることができます。中でも印象的だったのが次の3機種でした。
- 1914年「国産初の水洗便器」 – 日本で初めて水洗式トイレを実用化し、当時の衛生環境を一変させた記念碑的モデル。
- 1980年「ウォシュレットG」 – 温水洗浄の文化を普及させた初代ウォシュレット。トイレ後の新しい習慣を日本中に広めました。
- 1993年「初代ネオレスト」 – 一般的に1回13リットル使用していた時代に、大8リットル・小6リットルの超節水を実現したタンクレストイレ(ちなみに現行モデルではわずか3.8リットルで洗浄可能)。
このように節水性能は約30年で70%もの向上を遂げており、技術革新の凄さを実感しました。また、高層ビルの上層階で起きる排水課題など、各製品が生まれた背景にある歴史も学ぶことができました。
排水方式の違いを実機で比較検証
次に、実際に水を流せるデモ機を使ってトイレの排水方式の違いを比較体験しました。駅など連続使用が多いトイレにはどの方式が適しているか?施工コストを重視する商業施設にはどれが良いか?といった疑問に対し、目の前で動作を見比べることで理解が深まります。それぞれの方式の特徴は以下の通りです。
- フラッシュバルブ式(直結式):タンクがなく水圧で直接洗浄するため、連続使用に強い方式です。
- タンク式:水を一旦タンクに貯めてから流す一般的な方式で、工事面で大きなメリットがあります。ただしタンクに水を貯める時間が必要なため、連続使用には不向きです。
- フラッシュタンク式:上記2方式のハイブリッド。圧力を利用しつつ小型タンクに水を確保することで、連続使用と省施工の両利点を実現しています。
実機で確認することで、設計段階から「排水方式×利用者数」のマッチングをシミュレーションしておく重要性を再認識しました。
エコリモコン&UV除菌で電気代と衛生課題を同時に解決
公共施設向けソリューションの中でも、パブリック使用を想定してコストパフォーマンスに優れていると感じたのが「エコリモコン」です。これはトイレのボタンを押す力を利用して発電する無線リモコンで、電池や配線工事が一切不要という優れもの。従来品よりも大幅に薄型化されており、凹凸が少ない分お掃除もしやすくなっています。省エネとメンテナンス性の向上を両立させるこのシンプルな仕組みには感心しました。
さらに衛生面では、紫外線で便座を除菌する機能にも注目しました。海外市場向けモデル(中国市場のネオレスト等)に搭載されている最新技術で、ボタンひとつでフタ裏に内蔵されたUVライトが照射され、便座の除菌が行われます。衛生管理への新しいアプローチとして今後注目を集めそうです。
ブリストルスケール「便センサー」がもたらすヘルステックの始まり
TOTOの最新モデルのトイレには、排便状態を自動解析する「便センサー」が搭載されていました。医学的指標である「ブリストルスケール」に基づいて便の形状や硬さを判別し、ユーザーの体調をスマートフォンアプリに可視化してくれるというものです。まさにトイレが毎日の健康管理デバイスになる時代であり、日々のデータ蓄積とAI解析によって利用者のコンディション変化を早期に察知することも可能になるかもしれません。
シャワーヘッド3モードを体験!最適なバスルームルーティンとは
トイレ以外の最新設備も見逃せません。コンフォートウェーブシャワーのデモ機に触れ、3つの吐水モードを実際に体験しました。それぞれのモードの特徴とおすすめの使用順は次の通りです。
- ウォームピラー – 太めの水柱が体を包み込み、湯冷めしにくい温かさをキープします。まずこのモードで身体を温めるのがおすすめです。
- ナチュラルケアミスト – ウルトラファインバブル(極小の気泡)を含む霧状の水流で肌を優しく洗浄します。ウォームピラーで体温が上がり毛穴が開いた後に使うと、毛穴の汚れ落としや美容ケアに効果的です。
- コンフォートウェーブ – しっかりとした水流が特長です。節水と洗浄力のバランスに優れ、髪や身体を効率よく洗い流します。
これら3モードは組み合わせて使うことで温浴効果と洗浄効果を最大限に発揮できます。実際に体験してみて、例えばホテルや温浴施設でこのシャワーを導入すれば、お客様にワンランク上のバスタイムを提供できるだろうと感じました。設備面から付加価値を提案できる絶好のアイデアです。
バリアフリーラボでレイアウトを即時シミュレーション
見学の最後には、「バリアフリーラボ」と呼ばれるエリアにも足を運びました。ここは車いす利用者や介助者の動きを再現できるモジュール式のブース空間で、実際の機器を自由にレイアウトしながら動線を検証できます。背もたれ付き多機能トイレや様々な機器が設置されており、私も実際に操作・体験させていただきました。図面上では掴みにくい車いすでの動きやすさなどをその場で確かめられるため、非常に具体的なイメージを持てます。
設計者が得られる5つのメリット
TOTO Technical Centerの見学を通じて、施設設計に携わる者が得られるメリットは多岐にわたります。特に重要だと感じたポイントを5つにまとめました。
- 実機レイアウト検証で設計リスクを低減 – 図面だけではなく実機でレイアウトを試せるため、設計段階での見落としやミスを減らせます。
- 利用形態に合わせた排水方式選定でメンテ費抑制 – 利用者数や用途に適した排水システムを事前に検証できるため、過不足のない設備計画につなげられます。結果として維持管理コストの削減に寄与します。
- 電源レス機器の活用でSDGs対応&ランニングコスト改善 – エコリモコンに代表される電源不要の機器を採用すれば、省エネで持続可能な施設運営と電気代削減の一石二鳥になるかもしれません。
- IoT健康管理で利用者満足度アップ – 便センサーなどIoT技術の導入により、利用者の健康ニーズに応える付加価値サービスの提供が可能になります。施設の差別化や満足度向上につながります。
- 「入口から出口まで」一括相談が可能(TOTO×当社連携) – TOTO様と当社の連携により、トイレ空間の計画から設計・施工・保守までワンストップで相談できる体制を整備しています。窓口を一本化することでプロジェクトをスムーズに進行できます。
設計者・事業者の皆様には、ぜひ一度TOTO Technical Centerで最新の設備を体験していただきたいと思いました。
まとめ
TOTO Technical Centerは、バリアフリー・サステナビリティ・IoTヘルスケアといったテーマを一気通貫で学べる唯一無二の施設でした。今回の見学で感じたのは、単なる設備展示に留まらず「課題解決のヒント」がそこかしこに散りばめられているということです。また、TOTO様との連携により〈設計・施工・保守〉のワンストップ支援も可能です。「最新テクノロジーを体感してみたい」「具体的な導入相談をしたい」といった企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。
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